平成23年度における労働行政の運営方針について(抄)

                            宇都宮労働基準監督署

 

 経済情勢は回復の兆しがみられるものの、県内の雇用・労働環境は依然として厳しい状況が続いており、総合労働行政機関である栃木労働局には、県内の雇用・労働におけるセーフティネット機能の発揮が強く求められています。

 一方、中長期的には、人口減少社会において、国民が将来に希望を持って安心して働けるような我が国社会の活力を維持・発展させていくための労働行政の展開が必要となっています。

 このため、栃木労働局は、関係機関との緊密な連携の下、労働基準行政、職業安定行政及び雇用均等行政の専門性を発揮しつつ一体となって総合労働行政の展開を図ることとしています。

 平成23年度の施策展開に当たっては、次の事項を最重点施策として実施します。

 

◎ 労働基準行政の重点施策

労働基準行政としては、法定労働条件の遵守徹底のための迅速かつ厳正な対応を行うとともに、労働条件の向上・労働環境の改善に向けた労使の取組を効果的に促すための施策を実施します。

また、労働者の権利の迅速かつ適正な救済の観点から、いわゆるPDCAサイクルを引き続き適切に実践し、行政サービスの向上に努めます。

そして、「健康で安心して働くことのできる労働環境の整備」のため、以下の三点を労働基準行政の重点施策として平成23年度の労働基準行政を展開します。

    労働者の安全と健康確保

    県内労働者の法定労働条件の履行確保

    被災労働者等に対する迅速・適正な労災補償給付

 

1 労働条件の確保・改善対策

ア 経済情勢に対応した法定労働条件の確保等

() 長時間労働の抑制のための監督指導等

() 賃金不払残業の防止

() 法定労働条件の履行確保等

() 未払賃金立替払制度の迅速かつ適正な運営

イ 特定の労働分野における労働条件確保対策の推進

()  介護労働者

訪問介護における移動時間に係る適正な取扱等の問題について、実効ある監督指導等を実施します。

()  医療機関の労働者

夜間勤務を伴う医療機関の労働者については、特に長時間労働抑制、労働時間管理の適正化及び過重労働の防止に焦点を当てた指導を実施します。

()  外国人労働者、技能実習生

昨年の技能実習制度の改正を踏まえ、技能実習生に対する適正な賃金の支払、労働条件の明示等関係法令の徹底を図ります。

また、出入国管理機関との相互通報制度の確実な運用を図ります。

() 自動車運転者

「自動車運転者の労働時間等の改善基準」等について、荷主を含む関係業界への周知を図りつつ、その遵守徹底を図ります。

また、地方運輸機関との合同監督・監査を実施し、併せて相互通報制度を適切に運用し連携を図ります。

()  派遣労働者

派遣元、派遣先における関係法令の適用の特例を踏まえて、派遣元、派遣先事業者に対する関係法令の遵守徹底を図ります。

また、偽装請負等については、職業安定部と共同監督を実施するとともに、重篤な労働災害につながった場合については、司法処分を含め厳正に対処します。

() パートタイム労働者

パート労働者の労働条件確保のために、パート労働法についても、周知、啓発を推進します。

 () 障害者

障害者については、関係機関との連携の下、的確な情報把握を図り、事業主に対する啓発・指導に努め、問題事案の発生防止及び早期是正を図ります。

ウ 「労災かくし」の排除に係る対策の一層の推進

昨年度においては、虚偽の報告を行った三事業主等を司法処分しているところであり、「労災かくし」の排除を期すため、的確な監督指導等を実施し、司法処分を含め厳正に対処します。また、全国健康保険協会都道府県支部との連携による労災保険給付の請求勧奨を行うとともに、行政内部の連携を図りつつ、「労災かくし」の疑いのある事案の把握及び調査を行います。

エ 人身取引対策の推進

 

2 最低賃金制度の適切な運営

ア 最低賃金額の周知徹底等

イ 最低賃金引上げに向けた中小企業への支援

雇用戦略対話の合意等を踏まえ新設された「最低賃金の引上げに向けた中小企業への支援事業」について、中小企業等への周知に努め、円滑な実施を図ります。

 

適正な労働条件の整備

ア 長時間労働の抑制及び年次有給休暇の取得促進

イ 労働契約法等の周知・啓発

ウ 賃金・退職金制度の改善の推進

 

4 労働者の健康と安全確保対策の推進

ア メンタルヘルス対策及び過重労働による健康障害防止対策等

 () メンタルヘルス対策

 () 過重労働による健康障害防止対策

 () 定期健康診断の有所見率の改善に向けた取組

「定期健康診断有所見率改善チャレンジ大作戦」のパンフレット等を活用し、周知啓発を図ります。

イ 職場における受動喫煙防止対策

受動喫煙防止対策の必要性について、あらゆる機会をとらえ、事業者に対する周知を図るとともに、飲食店等における喫煙室設置等に係る助成制度等についても周知を行い、活用を勧奨します。

  熱中症予防対策

夏季の猛暑に備えて、建設業、製造業等、暑熱な環境で作業を行う事業者に対し、平成21年に策定された「職場における熱中症予防対策」を早期に周知し、必要な指導を行う。

エ 石綿健康障害予防対策

オ じん肺予防対策

カ 化学物質管理対策

キ 労働災害多発分野における対策

()  墜落・転落災害防止対策の推進

建設業における墜落・転落による死亡労働災害の増加及び監督指導結果における半数以上の足場の墜落・転落防止措置の不備の指摘があったことを踏まえ、当該措置の徹底や通達で示した「より安全な措置」の更なる普及を図ります。また、陸上貨物運送事業では、トラックの荷台等からの墜落・転落災害が多いことから、「安全な荷役作業方法を示したマニュアル」に基づく安全措置の徹底について指導を行います。

() 交通労働災害防止対策の推進

(ウ) 機械災害防止対策の推進

プレス機械については、依然として指の切断等の重篤な災害が多いことから、手払い式安全装置を原則として使用禁止とするほか、プレスブレーキについて、災害防止 効果の高い安全装置の使用を義務付ける改正省令及び、改正構造規格が本年七月に施行されるため、その周知及び遵守の徹底を図ります。

() 労働災害が増加している業種における対策

労働災害が増加している食料品製造業、建設業、陸上貨物運送事業、ビル清掃事業等の業種に対し労働災害防対策の徹底について指導を行います。

  自主的な安全衛生活動

  労働災害の一層の減少を図るため、局署の幹部が経営トップに対し、企業の自主的な安全衛生活動の充実について指導を行います。

  また、当局の普及促進指導要綱に基づき、事業場におけるリスクアセスメント等の実施促進を図り、実施率を着実に向上させます。

 

5 労災補償対策の推進

ア 労災保険給付等の迅速・適正な処理

イ 精神障害等事案及び脳・心臓疾患事案に係る適正な処理

ウ 石綿関連疾患への的確な対応

労働者等に対し、特別遺族給付金の請求期限が平成24年3月27日であることをはじめとした石綿救済法の内容や石綿関連疾患に係る補償(救済)制度については、改正後の認定基準等を踏まえ、労災保険給付及び特別遺族給付金の請求勧奨を行い、被災労働者及びその遺族に対し迅速・適正な補償・救済を行います。

  費用徴収及び第三者行為災害の適切な処理

  行政争訟に当たっての的確な対応

 

6 家内労働対策の推進

「第10次最低工賃新設・改正計画」(平成22年4月〜平成25年3月) に基づき、「栃木県衣服製造業最低工賃」の改正等を行うとともに、決定した最低工賃に ついての周知徹底を図ります。